労働災害における、はさまれ・巻き込まれ事故発生時のポイント
日本全国の労働災害の発生状況について、労災における死亡者数は昭和49年の4,330人をピークに減少傾向で、休業4日以上の死傷者数においては昭和53年の348,826人をピークに減少傾向にあります。直近5年の推移においては、安全対策技術が進んでいることで死亡災害発生件数は、800人~1000人弱を前後している状況で横ばいとなっており、休業4日以上の死傷者数においては、実は増加傾向にあります。
厚生労働省が発表している労働災害発生状況の「業種別労働災害発生状況(確定値)」では令和3年の確定値は149,918人(新型コロナウイルス感染症への罹患を除くと130,586人)となっており、前年は131,156人(新型コロナウイルス感染症への罹患を除くと125,115人)であるため、前年比+18,762人(+14.3%)の状況です。その内訳となる、業種別の推移は第三次産業が+20.2%、製造業が+11.4%、建設業が+7.4%増加しています。
本記事では「労働災害の事故の型」の割合で上位を占めている「はさまれ・巻き込まれ」に焦点を当てて解説いたします。「はさまれ・巻き込まれ」による労災は大きな事故に繋がりやすい事故で、死亡者数も例年100名を超えています。皆様に知っていただきたい補償内容や必要となり得る申請についてお伝えいたします。
はさまれ・巻き込まれ事故の例
まず、今回解説する「はさまれ・巻き込まれ」による労災事故はどのような事故が当てはまるのか、具体例をお伝えします。
はさまれ事故
・フォークリフトのフォークが急下降し、地面との間に手を挟んだ
・後退してきたトラックに気づかず、積荷作業中にトラックと壁の間に挟まれた
・サスペンションを上げた状態のトラックの下で作業中にサスペンションと床面に挟まれた
・クレーンを用いた吊上げ作業中に指が挟まれた
・プレス台のプレス時に挟まれた
・機械の清掃中にカットを行う部分に指が挟まれた
・機械内部の詰まった箇所を確認した際に手が挟まれた
複数人での作業中に適切な意思疎通が図れなかったことで事故に至るケースがいくつも見受けられます。
巻き込まれ事故
・横中ぐり盤に腕が巻き込まれた
・ボール盤での穴あけ作業中、手袋が巻き込まれた
・樹脂混練機に手を入れた際にスクリューに巻き込まれた
・食肉加工用ミキサーの刃に巻き込まれた
・作動の確認中、Vベルトに手指を巻き込まれそうになった
・ベルトコンベアの修理作業中に手が巻き込まれた
・チェーンソーでの作業中に首に巻いていたタオルが巻き込まれた
手足が直接巻き込まれたケース以外にも、手足に装着している物が巻き込まれたことで事故が発生しているケースがいくつかあります。
切断事故
はさまれたり、巻き込まれた結果、切断に至る事故も数多く発生しています。
業務中に指を切断した際に受けられる補償や必要な申請については以下のページにて解説しておりますので、是非ご参考ください。
労災保険給付とは
業務中のはさまれ・巻き込まれ事故が発生した際には、労災保険給付を受けることができますが、給付には申請が必要です。労災保険の補償の種類はいくつかあり、申請可能な条件がそれぞれ異なります。労働災害における申請手続きについては下記にて解説しておりますので、ご参考ください。
会社に対する損害賠償請求
はさまれ、巻き込まれ事故の場合、安全配慮義務違反を理由に、会社や元請け業者に対して損害賠償請求を行うことが可能です。この「安全配慮義務違反」に該当するかどうかは、主に以下の内容がポイントになります。
・機械に防護措置や安全措置を怠っていなかったか
・機械や器具の点検を実施していたか
・機械の安全な使用法についての注意や教育を実施していたか
・故障した機械を労働者に使用させていたか
上記からもお分かりになる通り、安全配慮義務違反の基本的な考え方は「労働者が危険にさらされないよう、事前に対策を講じているか」というものです。
しかし、安全配慮義務違反に該当する場合は直ぐに賠償を受けられるわけではなく、個別事案について請求可能であるかどうかを確認するのは難しいため、まずは専門家に相談されることをお勧めしております。
実際に保障される損害項目
はさまれ・巻き込まれによる労働災害における主な損害項目は以下の4つです。
・治療費(付き添いのための看護料,通院時の交通費も含む)
・休業損害(休業日に本来貰えるはずであった給与)
労災保険の適用では基本的には60%のみの支給になるため、超過分を請求できます。
・慰謝料
労災保険の適用には慰謝料の支給が含まれておらず、使用者に対する損害賠償請求にて補填する必要があります。
・逸失利益(労災災害を被っていなければ得られたと考えられる、将来の収入)
慰謝料同様、労災保険には含まれていない為、使用者に対する損害賠償請求にて補填する必要があります。
後遺障害逸失利益の計算は,
収入金額(年収)×労働能力喪失率×稼働年数(67歳までの期間)に対応するライプニッツ係数
という形で行われます。
労働能力喪失率は、障害等級に応じた労働能力喪失率が適用されるのが原則です。
はさまれ、巻き込まれ事故における解決事例
弊所では「はさまれ・巻き込まれ」に関する労災の賠償請求をご依頼いただいたことが何件もございます。
解決事例については下記ページにて紹介しておりますので、ご参考ください。
弁護士に依頼するメリット
はさまれ・巻き込まれの労働災害は、会社への損害賠償請求によって補償額が大きく異なりますが、会社側は自社に責任はない旨を主張し、裁判に発展するケースも多々あります。仮に、裁判に発展した場合、会社側は弁護士に依頼することがほとんどですので、被害者は会社側の弁護士とやり取りをすることになります。
たとえ、被害者側に全く落ち度がなかったとしても、法のプロである弁護士に対して適切な要求を通すことは非常に難しく、適切な補償を受けられない可能性が高いです。ですので、被害者側も弁護士に依頼し、相手側と対等な立場で要求を訴えられる体制を取ることを強くお勧めいたします。
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