仕事中の労災事故によって死亡した場合、遺族の方が対応すべきこと
労働災害によってご家族が死亡した場合、労災保険のどの内容が誰に適用されるのか、遺族の方々が必要となる労災保険の申請方法等について解説いたします。
労災保険とは
労災保険とは、労働者を保護するための公的保険制度で、正式には「労働者災害補償保険」と呼びます。
業務中、または通勤中の事故によって、負傷・疾病・障害・死亡したときに、被害を負った労働者やその遺族は一定の給付金を受け取ることができる制度です。
労災保険の補償範囲には、以下のようなものがあります。
【労災保険の補償範囲】
・療養補償給付
・休業補償給付
・障害補償給付
・遺族補償給付
・葬祭給付
・傷病保障給付
・介護保障給付
本コラムでは労災によって亡くなった場合に、その遺族が受けられる補償である、遺族補償給付、葬祭給付について主に解説いたします。
遺族補償給付とは
遺族補償給付とは、労働者が業務上に死亡した場合に遺族に支給される給付金の事を指します。類似する単語で、「遺族給付」がありますが、業務中の事故のときに支給されるのが「遺族補償給付」、通勤中の事故のときに支給されるのが「遺族給付」です。通勤中の事故は企業が加害者ではないことから、「補償」という文言が削除されるのです。
そして、遺族(補償)給付は、遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金の二種類に分けられます。
【遺族(補償)年金について】
遺族(補償)年金とは、労災で亡くなった労働者の収入によって生計を維持していた家族などに対して、支払われる年金で、受給資格者が定められています。資格者となれるのは、労働者が死亡した時点で当該労働者の収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。また、上記の順番で受給資格があり、最優先の順位者のみ受け取ることが可能です。なお、妻以外の遺族について、被災労働者の死亡当時に一定の高齢または年少、一定の障害(障害等級5級以上の身体障害)の状態であることが必要です。具体的な条件は以下の通りです。
① 妻または60歳以上か一定障害の夫
② 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子
③ 60歳以上か一定障害の父母
④ 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
⑤ 60歳以上か一定障害の祖父母
⑥ 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
⑦ 55歳以上60歳未満の夫
⑧ 55歳以上60歳未満の父母
⑨ 55歳以上60歳未満の祖父母
⑩ 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
また、受け取れる金額は遺族の人数によって変わります。以下をご参考ください。
1名:給付基礎日額の153日分
※遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は基礎給付日額の175日分
2名:給付基礎日額の201日分
3名:223日分
4名:245日分
※また、遺族(補償)年金は一度だけ前払い申請が可能です。
【遺族(補償)一時金について】
遺族(補償)一時金とは、上記の遺族(補償)年金の受給資格者がいない場合、または遺族(補償)年金および遺族(補償)年金前払一時金の給付額の合計が、給付基礎日額の1000日分に満たない場合に、被災労働者の配偶者などの家族に対して一時金が支給されます。支給金額は以下の表をご参考ください。
①の場合
②の場合
葬祭給付とは
葬祭給付とは、葬儀費用の一部を填補する目的で、被災労働者の葬祭を行う者に対して支給される保険給付を指します。葬祭料(葬祭給付)の金額は、以下の2つのうちいずれか多い金額となります。
①被災労働者の給付基礎日額の30日分+31万5000円
②被災労働者の給付基礎日額の60日分
※被災労働者の死亡日翌日から2年が経過した場合、申請不可となります。
労災保険の申請
労災保険の申請は労働基準監督署にて行う必要があります。
一般的には、会社が代わりに手続きを行いますが、場合によっては労働者本人やその家族が行うこともあります。
申請方法・必要書類
まずは申請に必要な申請書を手に入れる必要があります。
申請書は補償の種類によって異なり、遺族(補償)給付の申請には、「遺族補償年金支給請求書」または「遺族年金支給請求書」を、添付書類(死亡診断書や死体検案書、戸籍謄本、被災労働者の収入により生計を維持していたことの証明資料など)と一緒に労働基準監督署長に提出します。
葬祭給付の申請の場合は「葬祭料請求書」(通勤災害の場合は「葬祭給付請求書」)、死亡診断書、死体検案書、亡くなられた事実を証明できる除籍謄本を労働基準監督署に提出します。
申請書類は厚生労働省のホームページからダウンロードすることが可能です。
(厚生労働省 「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken06/03.html)
加害者や企業に対する損害賠償の請求
労災保険の補償に慰謝料の補償は含まれておらず、死亡による逸失利益の補償が不十分な場合がほとんどであるため、被害者のご遺族は会社等に対して慰謝料等を請求することになります。通勤中の交通事故で死亡した場合は、加害運転者とその保険会社に対して損害賠償請求を行うことが可能です。
問題となるのは業務中における労災のケースです。業務中における損害賠償は、概ね使用者となる勤務先の会社に請求することになりますが、損害賠償請求を行うには会社の使用者責任、安全配慮義務違反を主張し、立証する必要があります。このような主張は、法律に精通している弁護士でないと対応ができませんので、弁護士までご相談しましょう。
労災事故は弁護士へ
ご家族が仕事中における事故で無くなられた場合はすぐに弁護士へご相談されることをお勧めいたします。
必要となる手続きを弁護士に依頼することで精神的ストレスの緩和にも繋がります。
当事務所では労働災害におけるご相談を幅広く対応しております。
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